プラットホーム

それはさておき,いつもの通勤電車で窓際に座り出発を待っていたときのことで,何気なく首を傾げて向かいのプラットホームのほうを見ると,赤い水平の帯が宙に浮かんでいる。その帯の状態は瞬きをしても消えず,原因が分かるまでその現象は数秒間持続した。
その日のぼくの右横の窓には日差しを遮るブラインドが途中まで下ろされていて,下4分の1から外が覗ける。普通に座った状態では,ブラインドの下の線より目の位置のほうがわずかに上になり,車外の景色は若干見下ろした角度の範囲しか目に入らない。赤い水平線はブラインドの下ぎりぎりのところにあって,それより上は隠されている。
首をさらに倒すと,赤の帯の向こうに黄色の帯が見え,それが点字ブロックだと分かった瞬間,赤い帯がプラットホームの端を示すものだと気付いた。
初めに首を少し傾げたとき,赤の帯が見えていたのは左目だけで,右の視線はブラインドの陰になっていたのだ。このような片目だけの情報で見える像は奥行き感がない。だが,脳がその周囲の両目で見えている通常の世界との整合性を探ぐるため,像が宙に浮いたような様相を見せるところが面白い。
| 「亜空間」の現象 | 2012.08.05(Sun)11:44 | Comments0 | Trackbacks0 | 編集 | ▲