如雨露

それはさておき,ソファーに腰を下ろしてテレビを観ていたときのことで,何気なく首を傾げてベランダのほうに目を向けると,金色に光る丸いものが宙に浮かんでいるように見えた。それはごく一瞬で,おそらく0.1秒にも満たない時間における出来事だった。
普段ならこういったことは,見えた次の瞬間には関心が他のものに移り,先ほどの現象はすっかり忘れ去られることになるが,今回のは違った。この現象がめったに出会わないものだとか非常に特殊なものだというわけではない。如雨露の突き出た長い口先が偶然にこちらを向いていたために真正面から見ることになり,その結果奥行き感が不安定になったもので,比較的よく見られる現象だ。
だが,このときはこういった現象こそ記憶し記録に残さなければいけないと強く感じた。これまでに紹介してきたようなインパクトが強く面白みのある現象と比べると確かに見劣りはする。だが,普段ものを見るときに頻繁に起こっている見え方を象徴するもので,見るという行為と意識との関連の重要なヒントがここにあると思ったからだ。
見えるものはどれも世界の中で整合性を保っているように思えるのは,そのように仕立てられた結果を意識という小窓から覗き見しているからだが,見えるものがいつも完成されているとは限らないのが分かるときがある。今回の如雨露の現象がそうで,脳が世界を決定する直前で複数の可能性のどれにするかを決めかねている段階では,そこに伝えられるべきでないメッセージを読み取ることができる。
特に,振り返ったり,首を急に傾げたりして視線が大きく動いた瞬間には,脳が試行錯誤する様子を垣間見ることができて面白い。
| 「亜空間」の現象 | 2012.07.30(Mon)19:09 | Comments0 | Trackbacks0 | 編集 | ▲