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バックル

 出かける前,いつものようにズボンをはく。腰までずり上げてフックを掛けると,後はファスナーを上げてベルトを締めるだけだ。ベルトの尻尾がだらしなく垂れ下がっているのが見える。ベルトの頭のほうはねじれた状態で,バックルの長方形の穴がこちらを向いている。足元には,ほとんど無地のカーペットが一面に敷かれていて,ズボンの裾から靴下を履いた足の先が覗いている。バックルの四角い穴を通してその向こうにも同じカーペットが見えている。しかし,その見え方がどこか不自然だ。その辺りの空間が歪んでいるように感じる。
 これは左右の目に映る像が合成されず立体視が成立していない状態が示す現象だ。普通は,ものを見ると左右の視線は同じところに向かい,そこに焦点も合わされるため,両眼で自然な光景を見ることになる。ところが,バックルの穴のようなフレームがほどよい距離にあると,その穴を通った左右の視線は別々の所にあるものをとらえることになる。とらえた像が左右の目で異なる場合は,その時点での何らかの理由でインパクトの強いほうの像が選ばれて,それだけが見える状態になり,弱いほうは意識されないことになる。
 だが,同じ状況でも左右の目がとらえた像が似ているときは話しが変わってくる。このカーペットも,遠目には無地だが,よく見ると踏まれ方の違いからか毛の傾き具合などは微妙に異なっている。そのよく似た左右の像を脳は同じものと勘違いし,合成して意味あるものを作り出そうとする。
 その過程が今回の現象で,合成されずに行き場を失った像が創り出す歪んだ空間を見ることができる。これは,混迷する脳の働きを覗き込んでいることにもなっていて面白い。

| 「亜空間」の現象 | 2012.07.15(Sun)19:07 | Comments0 | Trackbacks0 | 編集 |

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秋岡久太(くだ)

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