亜の扉

　久しぶりに外食することになった。寒い夜空の下レストランまで西に向かって歩いていてふと見上げると，正面に写真のような星が目に入った。
　木星と金星が行儀良く水平に並んで輝いているのだ。双子座の頭の部分にも見えるが，この季節の今の時刻では方向が違っているし，あまりにも明るすぎるなどと考えていたら，横から嫁さんが，細長い高いビルの屋上の端にライトが二つ点いているように見えるとささやいた。
　その瞬間から，二つの星は縦長の長方形の二つの頂点に位置するように見えてきた。レストランに着くまでの５分間ほど，寒さを忘れてその黒い高層ビルを眺めて歩いた。