飴

その店に直径が3センチ弱の球形の飴が売られていた。グレープやメロンやソーダ−など何種類かあったが,どれもその味の飴にミルクの塊が3分の1程度くっついていて,全体として球形をしていた。中でもソーダ−味のものが好みで,その店に寄ると必ずといっていいほど購入していた。飴の表面には粗目の砂糖がまぶしてあって,口に入れると最初は砂糖の甘味しか感じないが,それが溶けるとソーダ−と同時にミルクの味が口いっぱいに広がる。球形の飴は舌を動かすと口の中で簡単に転がるので,ソーダ−の部分とミルクの部分が舌の異なる部分に次々と当たって味がめまぐるしく変わるのがわかる。このソーダーの刺激とミルクの甘味が対立して味覚に訴えてくるところに斬新な感覚があった。
この頃から,味覚にはコントラストが重要な要素だと思うようになった。口に入れた複数の食材がくちゃくちゃとかき混ぜられる前の独立した個々の味が対立している段階のことで,その対比が醸し出す味の妙は,あらかじめ混ぜられた料理とは明らかに異なる味覚の空間を持っている。
その飴が手に入らなくなって久しいが,最近「キシリクリスタル」の「ミルクミントのど飴」という商品が気に入っていて毎日のように口にしている。この飴は3層になっていて,外側はどちらも清涼感のあるミルクミントで,中央がキシリトールでこちらは甘味が強い。この飴をそのまま舐めていたのでは,特別なものはそれほど感じないが,外側の一層を外すとミルクミントとキシリトールが表裏の飴になる。これが,かつてファンシーショップで買い求めた飴と味わいがかなり似ている。
外側のミルクミントは,全体をしばらく舐めていると,温度が上がって柔らかくなるからか,歯の当て具合によって意外と簡単にずれるようにして外れる。取れた部分はかみ砕くなりして速く処理し,残った2層を舌で転がすと,それらの味のコントラストを楽しむことができる。
| 「亜空間」の現象の周辺 | 2012.03.05(Mon)12:21 | Comments0 | Trackbacks0 | 編集 | ▲